マンションの共用部分を破損してしまった・・・ そんな時どうする?
マンションに暮らしていると、日常の中で思わぬトラブルは避けられません。
家具や家電を搬入している際に共用廊下の角をこすってしまった。
子どもが遊んでいて玄関前の壁を傷つけてしまった。
自転車を倒して駐輪場の柱をへこませてしまった。
こうした“共用部分の破損”は、決して珍しいことではありません。
しかし、いざ起きると「どこに連絡すればいいのか」「費用は誰が負担するのか」「保険は使えるのか」など、迷う方が多いのも事実です。
この記事では、大規模修繕工事を多数手がける専門会社の立場から、トラブルを円滑に処理するための正しい対応手順と、知っておきたい専門的なポイントを解説します。
■共用部分とは何か?まずは区分所有法の基本を解説
マンションの「共用部分」とは、区分所有法第4条で定められる「専有部分以外の建物の部分」を指します。
つまり、廊下・エントランス・外壁・屋上・エレベーター・駐車場・配管など、住民全員が共同で利用・所有している箇所のことです。
これらは一部の居住者ではなく、区分所有者全員の共有財産。
したがって、誰かが破損した場合、その修繕は個人ではなく「管理組合(所有者全体)」の承認・対応を経て行うのが原則です。
勝手に補修を行ったり、放置したりすることは、後のトラブルの火種になりかねません。
■実際に起こった事例:廊下の角をこすってしまったケース。
あるマンションで、住民が家具の搬入中に共用廊下の角を台車でこすってしまいました。
表面の塗装が剥がれ、下地が一部露出した状態です。
見た目には小さな損傷でしたが、そのまま放置すれば雨水が染み込み、経年で下地の劣化や錆の発生につながる可能性がありました。
住民の方はすぐに管理会社へ報告し、管理組合立会いのもとで弊社が現場を確認。
既存仕上げ(弾性塗料+コーナー保護材)を調べた上で、部分補修を提案しました。
結果的に半日で補修完了。費用は原因者の個人賠償責任保険から支払われ、住民間のトラブルも起きずに解決しました。
このように、「早めの報告」「専門会社による補修」「保険活用」の3点がそろうと、損傷は最小限で済みます。
■対応の基本手順
共用部分を破損してしまった場合は、以下の順に対応するのが理想です。
① 管理会社または管理組合への速やかな報告
まずは口頭ではなく、できれば写真を添えて正式に報告します。
「いつ・どこで・どのように壊したか」を明確にすることで、原因特定と対応判断がスムーズになります。
② 損傷箇所の記録
スマートフォンで構いません。
近景・中景・全景の3枚を撮影しておくと、補修範囲の見積や保険申請にも活用できます。
③ 管理組合による対応方針の確認
管理会社や理事会が、修繕の方法や見積依頼先を決定します。
ここでのポイントは、「共用部の仕様を理解している専門会社」に依頼すること。
特に大規模修繕を実施した会社が把握している場合、同等材料での補修が可能です。
④ 費用負担の整理
原因者が明確な場合は原因者負担が原則。
ただし、事故の内容によっては個人賠償責任保険や火災保険の特約で補償されるケースもあります。
⑤ 修繕実施と報告
補修が完了したら、報告書や写真を管理組合に提出し、原状回復を確認してもらいましょう。
■保険の活用と注意点
共用部分の破損で最も利用されるのが「個人賠償責任保険」です。
これは、自分や家族の不注意で他人の財物を壊してしまった場合に補償される保険で、火災保険や自動車保険に特約として付帯されているケースが多いです。
例:廊下の壁をこすってしまった
→ 「他人の所有物を壊した」とみなされ、保険対象となる場合が多い
例:搬入業者が原因
→ 業者の「施設・作業賠償責任保険」で対応
ただし、経年劣化による破損や故意による損傷は対象外です。
保険の可否は保険会社の判断となるため、早めに連絡・相談しておくことが重要です。
■よくある誤解とトラブル防止のポイント
共用部分の破損に関して、実際の現場で見られる誤解の多くは「軽微な傷なら申告しなくていい」という考え方です。
しかし、軽微な損傷ほど後から見つかった際に原因が不明となり、
「いつ壊れたのか」「誰がやったのか」といった不要な疑念を生みます。
管理組合から見れば、「隠されること」こそが一番の問題。
信頼関係を損なうことが、修繕よりも大きな損失になります。
したがって、小さな傷でも報告する文化をつくることが、良好な管理運営の第一歩です。
■専門会社から見た“対応の質”の重要性
弊社では西三河エリアを中心に、多くのマンション大規模修繕を担当しています。
その中で共通して感じるのは、共用部分の破損対応が「そのマンションの管理レベル」を象徴しているということです。
報告のスピード、対応の透明性、補修の品質――
どれか一つが欠けても、入居者の信頼は失われます。
逆に、迅速かつ誠実な対応ができるマンションは、結果的に資産価値を維持しやすい傾向にあります。
マンション管理は「技術」だけでなく「文化」で成り立っています。
日常の小さなトラブルを正しく処理できるかどうかが、建物全体の寿命とブランドを左右します。
■まとめ
共用部分を破損してしまったときは、
1 すぐに報告
2 記録を残す
3 専門会社の確認を経て修繕
4 保険の活用を検討
この4ステップを守ることで、トラブルは最小限に抑えられます。
「壊してしまったこと」よりも、「どう対応したか」が信頼を決めます。
そしてその積み重ねこそが、マンションの資産価値を守る最大のポイントです。
弊社では、こうした共用部分の補修相談や技術的な再現補修も承っています。
“これくらい報告したほうがいいのかな?”という段階でも、ぜひお気軽にご相談ください。